CAM研究実績+論文

鶏卵モデル

鶏卵がんモデルとはニワトリの受精卵を用いてヒトのがんを再現する実験動物モデルです。実験動物として汎用されるマウスモデルと比較して鶏卵がんモデルは、①腫瘍が早期に形成される、②実験コストが安価である、③動物実験の倫理委員会承認を得るための管理手順を必要としない、④逃亡する恐れがないことから特別な動物実験施設を必要としない、という利点があります。また、実験に供する被験物質量が少量で済むことから、候補化合物のスクリーニングに適しています。弊社は、京都大学医学研究科腫瘍薬物治療学講座および京都大学アイセムズ物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)と共同で、患者検体を用いた鶏卵がんモデルによる抗がん剤の薬効評価系の開発を進めています。本評価系が確立された場合、抗がん剤シーズのスクリーニング、リード化合物の薬効評価試験および毒性試験(前臨床試験)など、抗がん剤の研究・開発において有用な実験動物モデルとして期待されます(図1)。
鶏卵がんモデルを用いた各種試験にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください(お問い合わせ窓口)

鶏卵モデル(図1)

鶏卵がんモデルはニワトリの胚を覆う尿漿膜(CAM: chorioallantoic membrane)にがん検体を移植すると、約7日でがんを作ることができる系です(図2)。
以下、CAMで形成されるがんをCAM腫瘍と呼びます。

鶏卵モデル(図2)

CAM腫瘍は明視野で観察することができますが、がん検体に対して蛍光標識をおこなったり、MRIを用いることでCAM腫瘍の局在の同定やサイズの計測を行うことができます(図3)。

鶏卵モデル(図3)

弊社では食道、胃、大腸、肝臓、胆嚢、膵臓、乳腺、肺、皮膚など様々ながんのcell line、オルガノイド、xenograft検体を用いたCAM腫瘍の作成を行っています。
また、消化器系希少がん患者さんの手術摘出検体を用いたCAM腫瘍の作成も行っています(図4)。患者さんの検体をヌードマウスと鶏卵に移植したところ、ヌードマウスよりも鶏卵への移植の方が優れた生着効率を示す検体があることがわかりました。マウスモデルで検証が困難であった検体においても、鶏卵モデルを用いることでin vivo薬効評価を行い得ると考えています。ご興味のある方はこちらの窓口よりご連絡下さい(お問い合わせ窓口)

鶏卵モデル(図4)

CAM腫瘍と親検体の遺伝子変異解析結果を比較したところ、親検体で認められた遺伝子変異が高い割合でCAM腫瘍へ維持されることがわかりました。
また、CAM腫瘍と親検体ではそれぞれの遺伝子変異のアレル頻度も類似しており、遺伝子変異の優れた保持性が示されています(図5)。

鶏卵モデル(図5)

鶏卵がんモデルではCAMの血管内へ薬剤を投与し、薬剤の抗腫瘍効果や毒性を評価することができます(図6)。

鶏卵モデル(図6)

【学会発表】

1) 齋藤伴樹1,真辺綾佳1,2,菊池理1,大橋真也1,吉岡正博1,武藤学1.
1: 京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学
2: 株式会社KBBM
The chick chorioallantoic membrane tumor model retaining a series of histological features of the parental tumor
第79回日本癌学会学術集会 広島 2020年10月1-3日 ポスター発表

2) Tomoki Saito1,Ayaka Mizumoto1,2,Osamu Kikuchi1,Shinya Ohashi1, Fuyuhiko Tamanoi3,Kotaro Matsumoto3,Aoi Komatsu3,Seiji Naganuma4, Yoshihiro Yamamoto1,Kenshiro Hirohashi1,Masahiro Yoshioka1,Masashi Tamaoki1,Makiko Funakoshi1,Manabu Muto1.
1: Department of Therapeutic Oncology, Graduate School of Medicine, Kyoto University
2: KBBM Inc.
3: Institute for Integrated Cell-Material Sciences, Institute for Advanced Study, Kyoto University
4: Department of Pathology, Kochi Medical School, Kochi University
Characterization of the chick chorioallantoic membrane tumor model in comparison with various xenograft mouse tumors
American Association for Cancer Research (AACR) Virtual Annual Meeting II, #1670, Online, June 22-24, 2020.

3) 齋藤伴樹1,真辺綾佳1,2,菊池理1,大橋真也1,3,武藤学1.
1: 京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学
2: 株式会社KBBM
3: 京大病院先制医療・生活習慣病研究センター
Chick chorioallantoic membrane (CAM) tumor retains the genetic and histological features of the original tumor
第80回日本癌学会学術集会 神奈川 2021年9月30日 口演発表

【論文】

1) Tomoki Saito1, Shinya Ohashi1, Ayaka Mizumoto1,2, Manabu Muto1.
1: Department of Therapeutic Oncology, Graduate School of Medicine, Kyoto University
2: KBBM Inc.
Patient-derived tumor models of esophageal cancer
Enzymes. 2019;46:97-111. doi: 10.1016/bs.enz.2019.10.003.

2) Aoi Komatsu1,2, Kotaro Matsumoto1,2, Yuki Yoshimatsu3, Yooksil Sin3, Arisa Kubota1,2, Tomoki Saito4, Ayaka Mizumoto4, Shinya Ohashi4, Manabu Muto4, Rei Noguchi3, Tadashi Kondo3, Fuyuhiko Tamanoi1,2.
1: Institute for Integrated Cell-Material Sciences, Kyoto University
2: Institute for Advanced Study, Kyoto University
3: Division of Rare Cancer Research, National Cancer Center Research Institute
4: Department of Therapeutic Oncology, Graduate School of Medicine, Kyoto University
The CAM Model for CIC-DUX4 Sarcoma and Its Potential Use for Precision Medicine
Cells. 2021 Oct 1;10(10):2613. doi: 10.3390/cells10102613.
※こちらはConflict of interest statementにKBBMの記載があります。